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「Argentango」「Rock the Ballet2」公演特集
原田薫×大貫勇輔 〜Prepare myself.〜
「Argentango」「Rock the Ballet2」公演特集
原田薫×大貫勇輔 〜Prepare myself.〜
ダンスシーンに大きな影響力を持つ原田薫と大貫勇輔がTDM初登場。まもなく開幕する「Argentango」と「Rock the Ballet2」に向けて語ってもらった。2人に共通していたのは、一流の共演者と共に、自分に向き合い挑戦し続けていること、そして、それを楽しめるメンタリティの持ち主であること。プロとして必要な感覚と覚悟を持って舞台に臨む2人とそうさせる両作品への期待が高まる。彼らのマインドからにじみ出ていた説得力と合わせて、ぜひその生で体感してもらいたい。

原田薫 ●原田薫

5歳よりバレエをはじめ、16歳よりジャズダンスをはじめる。

主な振付作品に、G2演出『スーザンを探して』、三谷幸喜演出『TALK LIKE SINGING』『国民の映画』、白井晃演出『GOLD』今村ねずみ演出『THE CONVOYSHOW』荻田浩一演出『ワンダフルタウン』など。また、ブロードウエイミュージカル『CHICAGO 2008 2010』ANNIE役、地球ゴージャス『星の大地に振る涙』『海盗セブン』など、数々の舞台にダンサーとして出演。安室奈美恵『rock steady』PV 等でも活躍している。



大貫勇輔 ●大貫勇輔

あらゆるジャンルのダンスを踊りこなす、成長著しい注目の若手ダンサー。7歳よりダンスをはじめ、17歳よりプロダンサーとして数々の作品に出演。バレエ・ジャズ・コンテンポラリー・モダン・ストリート(ブレイク・ポップ・ハウス・ロッキング・ヒップホップ)アクロバット・体操等多岐に渡るジャンルのダンスを踊りこなす。祖父はオリンピックの体操種目強化選手、叔母や母も元体操選手という生粋の体操一家に生まれ、その身体能力の高さは日本人では稀有な存在。

タンゴに初挑戦!(原田)
身体の中でオートマチックな状態にする。(大貫)       

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まず原田さんにお聞きします。今回の「Argentango」も参加されてみて、いかがですか?

原田

原田薫今回はタンゴなので、今は頭も体も一番大変な時期です(笑)。1ヶ月の稽古で2時間のボリュームのショーを仕上げなきゃいけない。しかも、私はアルゼンチンタンゴダンサーではないので、いろんな基礎的なことを含めて、ある意味1から教わりながらやっています。最初は、自分もまったくダンスの素人ではないので、「ある程度できるかな?」とタカをくくっていたらとんでもなくて、大変です(笑)。

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何曲くらい踊られるんですか?

原田

基本出ずっぱりです。ミロンガというタンゴを踊るサロンに集まった男女のストーリーなんですが、踊っていないときでも基本そこにいる状態になります。そこには、芝居的な要素も入ってきます。

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なるほど。大貫さんが出演される「Rock the Ballet2」に出ることになったきっかけは?

大貫

大貫勇輔僕は、2年前に前作に当たる「Rock the Ballet」をお客として観に行きました。BAD BOYS主宰のラスタ・トーマスはすごく有名な素晴らしいダンサーで、日本に来ることを知って、お会いしたいな〜なんてことを冗談半分で言っていたら会わせていただけたんです。

挨拶をしたら「せっかくだからレッスン受けて行ったら?」と言われ、レッスンを受けました。レッスンというのは、出演者たちが本番の前にやる決まったトレーニング、ウォーミングアップのことで、そこに僕も一緒に参加させてもらったんです。本番と同じ振付を僕も覚えて見せて、自分ができる技も見せました。すると、「君、いいね!いつか一緒にやろう!」と言われた話が、実現したという感じです。

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共演は今回が初めてですか?

大貫

いえ、今年の3月に、BAD BOYSがやった「ロミオとジュリエット」のドイツ公演に参加させてもらったのが初めてでした。それから、4月に今回の「Rock the Ballet 2」のリハーサルをアメリカでやらせていただきました。

アメリカでは8日間リハーサルがあったんですが、6日間で21曲覚えたんです。エイドリアンの振付は振り数も多いので覚えるのがものすごく大変でした。結局3曲減って18曲になったんですか、残りの2日間で4回通して、アメリカを発ちました。

あれから3ヶ月経って、ビデオを観ても全然思い出せなくて、やばい!と思っていたんですが、実際に動いたら体が覚えていて、意外とスルスルと思い出せました。

でも、不安な材料が多いですね。BAD BOYSの面々は海外のツアーでこの作品をやってるんです。そこに全くやっていない僕が参加するんです。自分ひとりでリハーサルをして、彼らに混ざることになるので、一緒に創り上げていく過程がないという点では、すごく心配です。

でも、そんなこと言ったら、前回の「ロミオとジュリエット」をやったときは、まったく知らない振付を5日間で覚えて、ゲネプロなしで本番に立ったんです。「嘘でしょ!?」と思ったんですが、海外のカンパニーだと結構あるみたいです。

原田

彼らもその時に初めて覚えた作品だったんじゃなくて?

大貫

彼らは「ロミオとジュリエット」を2ヶ月上演していました。そこに僕が入った形でした。

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それくらい大貫さんと共演したかったということでしょうか。

大貫

それもあったかもしれませんが、それよりも自分が参加したいという想いがありましたからね。ラスタに聞いたら「普通このスケジュールだったら誰も引き受けないよ(笑)。 僕だったら受けない。君は本当にすごいね。」と言われましたけどね(笑)。

TDM

そんな忙しい中で、年始はJUSTE DEBOUTの日本予選に出ていませんでしたか?

大貫

出ましたね。たまたまスケジュールが合ったので「出てみようかなー」と(笑)。そしたら、優勝して、フランスの大会に参加してきました。

TDM

すごいですね!6月には「春の祭典」や7月は「ピーターパン」も観させていただいて、とても素晴らしかったです。

原田

私も「ピーターパン」拝見しました。すごく良かった!

大貫

ありがとうございます!

TDM

原田さんも先日ソロ公演「モノクローム」の再演を終えられましたし、大貫さんも、いろんな舞台作品をタイトなスケジュールの中で覚えていらっしゃる訳ですが、どういう風に覚えたら、踊りも歌も芝居も含めて自然な表現が出てくるんでしょうか。

原田

それはもうリハーサルですね。徐々にちょっとずつ組み立てていきます。

大貫

自転車って一度乗れたら乗り方を忘れないじゃないですか。あれと似ていると思います。身体の中でオートマチックな状態にするんです。そこまでできると、他のこと考えながらセリフが言えたりします。例えば、共演者のことを意識するとか、お客さんの呼吸を感じられるようにするとか、自分の表情はどうなっているか、今後ろにある手はどうなっているかとか。そういう意識をどんどん増やしていくんです。

踊る感覚は何かを演じている感覚です。(原田)


TDM

今回の作品に向き合うスタンスとして、意識していることはありますか?

原田

今回はもうかなりのトライです。1ヶ月でこの作品を見せなきゃいけないので、頑張ってますというレベルでは駄目です。かなり気合を入れてます。

TDM

タンゴをやってみてどうですか?

原田

原田薫×大貫勇輔・・・楽しい(笑)。

絶対的に男性リードなので、相手の呼吸だったり、手で誘導される感覚を常に感じていなきゃいけないので、自分が振りを覚えればいいかという問題でもないです。

パートナーと初日からずっと稽古をしていますが、楽しいですね、うまくいった時は。やっぱりどうしても自分でいっちゃうんですね(笑)。相手のリードで動かないと。待たないといけないので、「うん、待って待って。」と言い聞かせています(笑)。

スムーズに行った時はすごく気持ちがいいです!今までに味わったことのない感覚。でも、全然タンゴの基礎をやっていないので、本当に難しいです。振付アシスタントの方に常にアドバイスを頂いています。

タンゴを趣味でやったりはしても、まさか舞台でやるなんて思っていなかったし、本場のダンサーに教わることができているので、すごく良い機会になっています。

TDM

共演者の顔ぶれを観てもおもしろそうですね。

原田

本当に皆さん綺麗なんですよ。そして、湖月わたるさん、水夏希さん、彩吹真央さんは元男役の方々ですから、身長が高いんです。でも、バンバン持ち上げられているんですよ(笑)。

私はそういうのはないんですが、タンゴにもそれぞれのスタイルがあってすごく綺麗です。アクロバティックなものもあれば、ステップだけで見せるものもあります。碓井菜央さんは小柄なので、ブンブン回されていますし(笑)。

なので、よっぽどこっちも体も鍛えておかないと、遠心力に負けてしまいますね。振付アシスタントの方は常にトレーニングして体幹を鍛えています。

TDM

そうなんですね!大貫さんはどんなトレーニングしてるんですか?

大貫

僕は、最近毎日バレエをやっています。あとは、体幹トレーニングくらいですかね。あまりプッシュアップとか筋トレはやってないです。

TDM

「自分の納得のいく踊りが踊れてるな」と思うことはありますか?

大貫

・・・半々ですかね。自分の理想はあって、そこには全然いけてないけど、今できる何かがハマったなと思う時があるくらいですね。

昔はすごくインプロとかやってたんですけど、最近はしなくなりました。ちゃんと振付を踊ることが今は大事だなと思ったので、バレエもトレーニングとしてやっています。

振付を踊るということは、なるべく自分を縛っていく作業になります。すると、そっちの方が、意外と無限にできるなと最近思います。インプロの方が意外と限りがある。決められたことをちゃんとやる方がすごく無限な広がりがあるんじゃないかなと。さっき言っていた意識の量は、振付の方が体をオートマチックにしていけば限りなく増やせますからね。

TDM

自分の理想のイメージ像とは?

大貫

大貫勇輔“今までなかった存在になりたい”というのはざっくりとしてあります。だけど、そうなるためには、自分がおもしろいと思う目の前のことをひたすら必死で追求していけば、たまたまそこにたどり着けるか着けないかくらいのことだろうなとも思っているし、ちゃんとそこを目指しながらチョイスして行かなくちゃいけないとも思っています。分かり易く例えて言えば、ヒュー・ジャックマンはいいなと思います。素敵だな、あんな風になれたらなと。

TDM

なるほど。薫さんはどういうイメージをお持ちですか?

原田

ジャンルで言うとジャズダンスをずっとやっていますが、私が踊っている時の感覚は何かを演じている感覚です。だから、歌や芝居をやることは必然だったなという感じがします。こないだのソロ公演では、ようやく今、この原田薫ができることができた感じがしました。

私はダンサーなんですけど、ダンサーよりも表現者というイメージを持っていて、でも一番自分の根っこにあるのはダンス。それがあったからいろいろできたのかもしれないですね。

プロフェッショナルって覚悟だと思います。(大貫)


大貫

原田薫×大貫勇輔僕はたまたま2000年の「DECADANCE」を観たときからずっと薫さんを知っていて、素敵なダンサーだなぁと小さいながらに思っていました。「日本人でもこんなにカッコ良く踊る人がいるんだ。僕もこんな風に踊りたい!」と思いました。



DECADANCE 2000 Crazy waltz:
上島雪夫氏演出・振付のダンス公演で4年間続いた。主な出演者は原田薫のほか新上裕也、東山義久、関仁史、小山みゆき、木下奈津子、加賀谷香など


それまでも舞台を観にいってもカッコいいと思わなかったんです。フォッシーとか、マイケル・ジャクソン、ピナ・バウシュとかが好きで、母親の影響で気づいたら好きになっていました。でも、あの「DECADANCE」を観てから、日本のダンスシーンもかっこいいと思い、どんどんダンスをしてきましたが、もう大体やり尽くされているんだなと思ってきたんです。

自分はまだまだですが、仮にこの中で上に行けても、過去にはもっとすごい人たちが大勢いる。ということは、それ以外の要素も足さないと、力が持てない。どうしたらいいんだろう・・・と22歳の頃に思っていたら、たまたまホリプロとつながりを持てて、先ほど話した舞台「ロミオとジュリエット」に出ることになります。

実は、それまで、ミュージカルや芝居は大嫌いだったんですけど、「ロミオとジュリエット」のおかげで、ミュージカルにしか、芝居にしか与えることのできない感動があることを知って勉強しはじめました。それも奥が深かった。

もちろん僕もダンサーとしてのプライドはあるし、最近はやっと少しずつ俳優としてのプライドも芽生えてきていますが、どれだけのものがミックスできるかが、新しい何かを産むことだと思っています。

先日、薫さんのソロ公演「モノクローム」を観させていただいて、「すげぇ!」と思いました。アートと芝居とダンスの中間点みたいなものであり、今の新しさだなと感覚的に思って、僕もそういう表現ができる存在になりたいなと思いました。

でも、どの要素をやらせてもプロフェッショナルでできるレベルでないといけないんですけど、その真ん中というか、上を目指していけたらいいなと思いました。

海外にはそういうことをやっているカンパニーはめちゃくちゃありますからね。日本はそういう意味で遅れています。こういった大規模なダンスの舞台は商業ベースじゃないとできないですが、ヨーロッパだと国がお金を出して動けますし、ブラジルではストリートダンサーがコンテンポラリーの作品を創ったり、イギリスではバレエダンサーがストリートダンスを踊ったりすると聞いたことがあります。コンテンポラリーの中ではバレエもできてストリートダンスができるのは当たり前ですからね。

原田

海外の人はなんでもできるもんね。

大貫

そうなんですよね。でも、日本人もストリートダンスで優勝もしていますし、ひとつのことをやらせるとものすごく尖ってできることは、日本人のすごさ、強さだと思います。

「DECADANCE」を見たのは小学校6年生の時でした。

原田

嘘でしょ!?(笑)。

TDM

その頃からダンスをされていたんですか?

大貫

ダンスをプロとしてしっかりはじめたのは、今思うと17歳かな。でも、ちゃんとプロとしての意識が芽生えたのは、2年前、23歳です(笑)。

TDM

何かきっかけがあったんですか?

大貫

2012年に出演したミュージカル「キャバレー」ですね。そこで、プロの意識が芽生え、「マシュー・ボーンのドリアン・グレイ」で主役を務め、さらに強まりました。

プロフェッショナルって覚悟なんだなと思います。その強さがすごく大事だと。言葉で言っちゃうと、簡単ですけど。

ダンスを好きでやってたレベルを超えたというか・・・責任と覚悟が目に見えるレベルでのしかかってきた時に、やはり覚悟を持って、責任をちゃんと負わないとできない。そうすると、何かが自分の中で変わったんです。

例えば、8000人を呼ばなきゃいけないとか、オーチャードホールに、主役として立たなきゃいけないとか、そのプレッシャーには何か持たないと潰されちゃうので、その覚悟を持ちました。

TDM

覚悟・・・興味深いです。では、最後になりますが、お客様にメッセージをお願いします。

原田

原田薫×大貫勇輔演出の方がブロードウェイでも振付されている方なので、時にはジャズダンスのショーも織り交ぜながら、すごくエンターテイメントなショーになっていると思います。ストーリーがあって、男女5人の駆け引きだったり、お客様もタンゴのミロンガに遊びに来たような感覚で観ていただけるかなと思います。

大貫

原田薫×大貫勇輔海外のなんでもできるダンサーたちが来日するので、ぜひその目で見てもらいたいですね。情報で知るのと、目で見るのは大きく違います。ダンスはDVDやYouTubeでも見れますけど、僕が「DECADANCE」を観て影響を受けたように、生でお金を払って観ることで、今の自分の何かが作られて、あるときピンとつながったりするんです。今回がそういうきっかけの舞台になるように僕も頑張るので、何か感じてもらえたらいいなと思います。

TDM

ダンサーという表現者が出せる影響力は無限だと思います。そのキーパーソンになっているお2人が同時期に舞台に出られるということでどちらの作品もとても楽しみです。今日はありがとうございました!

interview by AKIKO & imu
'14/08/14 UPDATE
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