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ミュージカル「FROGS」特集
小関裕太×平埜生成 〜表現という熱量。〜
ミュージカル「FROGS」特集 小関裕太×平埜生成 〜表現という熱量。〜
最近、ダンサーが舞台や演劇、自主公演など活動の幅を広げる中で、ダンサーがアクティングの表現方法を身につけるのと同様に、役者が役者という自分の得意分野を持ちつつも、ダンスをマスターしていく傾向も感じる。結局、表現者として個人の技量を高めているのだろう。いろんなものにチャレンジすることは大切であり、どのジャンルも簡単に習得できるものではない。でも、自分というフィルターを通して、得意な表現をたくさん見つけていくことは大切なことだ。

誰もが前向きにチャレンジする姿勢、雰囲気を綺麗にする謙虚な心、みんなが同じ目標に向かって仲間を大切にする想いなどが、ステージから感じられれば、人は感動し、共感することができるのではないだろうか。その具体的な方法を見出すために、クリエイティブという生みの苦しみに臨んでいる。きっとミュージカル「FROGS」もそんなエネルギーでキラキラするのだろう。

小関裕太×平埜生成 ●小関裕太(写真右)

1995年6月8日生まれ。主な出演作は、舞台『BLACK&WHITE 悪魔のテンシ 天使のアクマ』、『金色のコルダ』、ミュージカル『「テニスの王子様」2nd SEASON』菊丸英二役など。2006 年〜2008 年には、NHK「天才てれびくんMAX」にてれび戦士として出演。
http://ameblo.jp/koseki-yuta/


●平埜生成(写真左)

1993年2月17日生まれ。「劇団プレステージ」メンバー。主な出演作は、ミュージカル『テニスの王子様』、舞台『ロミオ&ジュリエット』など。8月3日(土)〜公開する映画「work shop」に出演。
http://ameblo.jp/hirano-kinari/


ミュージカル「FROGS」特集 小関裕太×平埜生成 〜表現という熱量。〜

役者だからこそできるダンス。

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まず、この世界に入ったきっかけは何でしたか?

小関

僕は、小学1年生の時にタップダンスを最初に習って、それがきっかけでCMの出演が決まって、こういう世界に入りました。

平埜

僕は、親がメイクの仕事をしていたので、こういう世界が身近な存在ではありました。小さい頃から「いつか僕もテレビに出るんだろうなぁ。」という潜在的な意識があったんです。でも、「いつまで経っても出れないなぁ。」と思っていました。親に聞いたら、オーディションがあって、事務所に入らないといけないんだよと(笑)。それで、いろいろと受けて、今の事務所に入ったという感じですね。

小関

きな兄(平埜)が昔から潜在的に芸能界に意識があったなんてはじめて知りました。だって「俺は一般人だから。」って、よく言っているんです(笑)。

平埜

うん、俺は一般人。普通の人です(笑)。

TDM

でも、今回のFROGSでは、主役をやられるということで、普通の人では務まらないですよ(笑)。

小関

彼はすごいですよ。ものすごいエネルギーを持っています。

平埜

いやいや、一般人パワーです(笑)。

でも、今回はダンスとか歌がいっぱいある舞台で、それまでダンスの経験はなかったので、踊れる人が共演者の中に多い分、頑張らなきゃなと思います。

いつもそういう環境に置かれていることが多いです。自分はできない、けど他の人はできちゃう。だから、頑張らなきゃいけない、やらなきゃダメだ!っていう意識はずっとありますね。

TDM

そういう環境は有り難いですね。

小関

そうですね。今回のFROGSは、ブレイクダンス、ヒップホップ、ロック、アクロバットも入ったり、もちろん歌も入っていますが、きな兄はすべてにパワーがあるので、すぐにできちゃうんです。そこがすごい!

平埜

そんなことないよ〜。ノリだよ、ノリ!(笑)。

TDM

そんなにいろんな表現をされていく中で、ダンスやお芝居、歌などの表現によって何か違いというか、意識が変わることはありますか?

小関

小関裕太×平埜生成 お芝居の経験があったで、その演技の経験にダンスを組み込もうという考え方になると思います。

逆に、最近、ダンサーの方も演技をする機会が増えていると思うんですけど、そういう方たちは、ダンスに演技を組み込んで、表現力の幅を増やそうという考えなのかなと思います。

ダンスも演技も演技表現するという意味では同じだと思います。ただ、その表現のバランスの取り方がそれぞ違いなのかと。そう考えると、ミュージカルはなんでもできるので、すごく楽しいです。

平埜

うん、本当に考え方が違うのかなって思いますね。ダンサーさんで、地球ゴージャスでも演技や歌もされていたSHUNさんが以前、僕たちの出た「ハンサムLIVE」で振付をしてくださったんですが、その時におっしゃってくれた言葉で、「お前らは役者なんだから、役者ができるダンスをしなさい。ダンサーじゃなく、役者だからできる表現をお客様に提示しなさい。」と。「なるほどな。確かにそうだよな。」と思いました。

もちろんダンスが上手くなりたいという気持ちもあるんですが、役者だからこそできるダンス、ダンサーさんには表現できない役者ならではの表現とか気持ちを組み込んだダンスができたらいいなと思います。そういうのが楽しいですね。もはや、ダンスではなくお芝居に近い感覚です。

表現者としてステップアップできるチャンス。


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今回の演出は岸谷五朗さんということで、大先輩のここがすごいと思ったところはありますか?

小関

本当に毎日学ぶことが多くて、舞台の演技なのか映像の演技なのか、映画の演技なのかドラマの演技なのか、それらは全部違っていて、その中で、舞台の演技を教えてくださいました。

そして、岸谷さんは踊りも踊れる方なので、バレエとかジャズとかヒップホップとか、なんでもできて、いろんなことを無限に掴めるんです。そういう方が演出してくださる環境は、僕たちにとって本当に大きな経験になったと思っています。

平埜

小関裕太×平埜生成僕も、「岸谷五朗さんはどういう演出をするんだろう…」と緊張していましたが、いざ稽古に入ってみると、めちゃくちゃ優しかったです。一から手取り足取り教えてくださいました。

今回、今まで演技をやったことがなく、オーディションに受かって初めてのステージという子がいることもあって、舞台の立ち方から、お客様にお尻を向けちゃいけないということなど、本当に一から教えてくれました。

あとは、今回、再演になるんですが、「お前たちでも作れることは作りなさい。」と言われました。

前回の5月公演の時は、「こう立って、こう動いて、こうやりなさい。」という演出でしたが、再演の今回は、自主稽古の時間がすごく多くて、岸谷さんは稽古場にいなくて、「お前たちで創るんだ。」と。一度、本番を踏んでいる僕たちもいるし、僕たちだけで新しい作品を作らなきゃいけない。自分たちで話し合って作品を大きくしなくちゃいけない。そういう風に、再演の今回から演出や稽古の形態が変わりました。

小関

岸谷さんは、ひとつひとつに大きな課題をくださるんです。だから、それに応えることによって、僕らもまたひとつ大きくなるステップアップができて、クリアするたびにそれが自分で分かるんです。そんな毎日がすごく楽しいんですよね。

平埜

たぶん、岸谷さんがプレイヤー側でもあるということもあると思うんですが、とても役者がのびのびやらせてもらえる環境だと思います。

小関

小関裕太×平埜生成それに、スペシャル公演として、上演期間中に、通常の配役を出演者の中で入れ替える回があるんですが、その稽古がとても難しいんです。

普通に話してても、人によって話し方は違うように、同じセリフ、同じ動きであっても、人が変わることによって、変わってくるんです。なので、同じ作品なんだけどまったく違う世界ができていると思います。

そのスペシャル公演では、僕ときな兄の役が入れ変わるので、とても難しいです。またそれも岸谷さんからの課題なんです。

僕が通常やっている役と、きな兄がやっている役とが入れ替わるんですが、先生の言うことをちゃんと聞く優等生と、先生や親の言うことを聞かない、思春期のデリケートな心を持つ、本当に対象的な性格の2人の役が入れ替わります。

もともと役者として僕ときな兄が持っている特長も違うから、ゴチャゴチャになって本当に難しいです。でも、それが岸谷さんが提示する課題。難しいけど、それもまた、楽しみのひとつでもあります。表現者としてステップアップできる、チャンスなんだなと思います。

TDM

この作品で何か気に入っているポイントはありますか?

小関

僕はこのストーリーや内容が好きです

もともと人間でカエルの姿になった2人と、カエルの世界にいる2匹が組み合わさって、そこで試行錯誤しながら、自分の居場所に気づいていきます。思春期や、青春を感じながら大人になっていく彼らの姿にジーンとくる作品なんです。

TDM

まとめるの、上手ですね〜(笑)。

小関

いえいえ(笑)。でも、本当に大好きな話で、自分も観客として観たいなと思うような作品なので、ぜひいろんな方に観てもらいたいです。

それに、ダンスだったり、歌だったり、熱量だったり、僕らにしか出せないがむしゃらさみたいなものがあります。袖に入ったら酸素を補給することもあるほど、息も吸えないくらい思い切り踊って、「もう歌えないでしょ!」っていうくらいの状態でも歌います。

平埜

小関裕太×平埜生成たまに疲れすぎて、ハァハァ!!と、目の前がどんどん暗くなってきて、鳥肌も立ってきて、「あ、このままじゃ、やばいかも。」と思いながら、セリフを言っていることもあります(笑)。

僕の中では、最後のセリフを言う前が一番しんどいポイントで、言う直前は、客席に背中を向けているので、思い切りハァハァ!!と言って、振り向いた時に、ドヤ顔で、最後の台詞を言いながら、目の前が暗くなりかけています(笑)。

小関

それくらい、全身全霊でみんな作っているので、そういう僕らにしかできない熱量がこの作品にはあります。

平埜

昨日、久しぶりの通し稽古だったんですが、Tシャツを4枚着替えて、しかもラストはクラクラになるし、こんなすごい舞台だったんだなと思いましたね。こんなにダンスをめっちゃ踊って、歌も歌って、とにかく、なんか、熱いんです!

TDM

お2人の話を聞いているだけでこちらも熱くなりました(笑)。

ミュージカル「FROGS」特集 小関裕太×平埜生成 〜表現という熱量。〜

こんなに熱い舞台はない!ぜひダンサーに観てほしい!


TDM

小関さんが18歳、平埜さんが20歳ということで、ダンサーからすると同年代のダンサーは、それほど過酷で身になる経験をできている人は少ないと思います。結果的には表現者であることは同じですが、お2人が俳優という道を進んできたからこそできる表現だし、それほど過酷な経験もできるのは素晴らしいことですね。

小関

この作品は青春や反抗期がテーマなので、きっとみなさんも感じたことのあるものがストーリーに入っているので、男女問わず、大人の方にも観にきて欲しいなと思います。絶対何か感じるものがあると思うので。そこが魅力ですね。

平埜

たぶん、役者がとんでもなく汗をかきながら、舞台上で、飛んだり跳ねたり歌ったりしているので、こんなに熱い舞台はないと思います!

TDM

それはきっと、まずお2人が熱くなっているからでしょうね。「こんなに熱い舞台ないです!」って言い切られたのは久しぶりです(笑)。

小関

小関裕太×平埜生成はい、想いは熱いです(笑)。

やっている時は本当に苦しいんですけど、終わったあとの達成感がものすごくて、「はぁ〜!今日も終わった〜!ビール…は年齢的に飲めないから、オレンジジュースを飲むぞ〜!」みたいな爽快感がありますね!

TDM

とても熱量が伝わってきて、本番が楽しみになりました! では、最後にTDM読者のみなさんにメッセージをお願いします!

平埜

読者のみなさんにはダンサーさんが多いかと思うのですが、今回の主人公のカケルという役が、ダンスコンテストで負けて、挫折をしてしまって、ダンスの道から外れようとするんですが、周りの家族や仲間が支えてくれて、また,ダンスに戻っていくという設定なので、今ダンスをやっていて、もし「本当にこの道でいいのか?」とか、ちょっとダンスに詰まったりとか、迷っていたり悩んでたりする人にはぜひ観て欲しいです。

カケルの気持ちが同世代の男の子とは、リンクすることがすごく多いんじゃないかと思います。僕もスペシャル公演でカケル役をやるに当たって、カケルと自分とが重なる部分をすごく感じて、改めて一歩踏み出せる作品になるなと思っています。

僕たちが熱く、踊れない中にも気持ちを持って表現しているものを観てもらいたいですね。ダンサーさんに観られるということにプレッシャーはすごくありますが、でも、ぜひ観て欲しいです。

小関

小関裕太×平埜生成ストーリーの中で、カエルの世界では、雨が降ると踊り出したくなる設定なんです。

雨に触れて、すごく楽しい気分になって、思わず踊り出したくなるという、本体のダンスの本質、本当の楽しさというのをカエルたちは知っていますが、人間たちはそれを知らない。だけど、カエルになってカエルの世界に飛び込むことによって、カエルたちと触れ合い、それに気づいて、ダンスの楽しさを知ることができた人間たちが、その経験を経て人間に戻っていきます。自分の目指している夢の、本当の楽しさとか、魅力とかって目指しているうちに忘れちゃうんですよね。そういったことを感じつつ、最後に「この作品は楽しかったな!」と思って帰っていただけると思うので、ぜひ!観れば絶対わかると思います!

平埜

うん、ぜひダンサーさんに観て欲しいです!

TDM

きっとその熱い気持ちは伝わったと思います。今日はありがとうございました!

interview & photo by AKIKO
'13/07/21 UPDATE
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