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飯塚浩一郎 / EBATO / 辻川幸一郎
〜 CMというフレームからダンスを表現する。 〜
飯塚浩一郎 / EBATO / 辻川幸一郎 〜 CMというフレームからダンスを表現する。 〜
2009年12月、DAZZLEの飯塚浩一郎氏が深く携わったストリートダンスを起用したCMが2本オンエアされた。前例のないことを具現化することがどれ程大変なことか・・・

彼が広告会社に就職して8年が過ぎた今、ダンス業界の希望となるであろう新たな“ダンサーの役割”が実績として残されたと言える。今までメディアを通じたダンス表現を“ダンサー”、“振付師”は行ってきたが、“広告クリエイター”という立場からダンスを提案・具現化した表現者が誕生した。

「今を生きる自分たちだからこそできることって?」誰もが感じ、そこでできることを精一杯やっている。そして、いつかもっと大きな“自分のやりたいこと”に協力してくれる仲間を見つけていく。今回浩一郎氏を通じて紹介することになった素晴らしい2人のクリエイターも、いろんな環境の中で“自分の在り方”を試行し、楽しみ、周囲から“必要とされる在り方”を確立している。それぞれが必要な要素を必要な分だけ、ナチュラルに語ってくれたインタビュー。そして、我らが踊れるコピーライター(!?) 浩一郎氏の熱いメッセージも満載!

飯塚浩一郎飯塚浩一郎

慶応義塾大学環境情報学部卒。2002年博報堂入社後、営業を経てコピーライターに。東京コピーライターズクラブ・大阪コピーライターズクラブ新人賞受賞。既存の広告手法に捉われない斬新な発想のクリエイティブに定評がある。大学時代に始めたダンスでは関東大学学生ダンス連盟の公演総指揮・振付を経て、2006年DAZZLE加入。ダンサーとしてだけでなくプロデューサー・脚本・映像制作を担当し、映像による字幕で物語を展開するスタイルを確立。2009年発表の「花ト囮」ではダンス公演でありながら演劇祭「グリーンフェスタ」でグランプリを受賞。(DVD「花ト囮」絶賛発売中)

EBATOEBATO

1992年、マクドナルドダンスコンテストに出場するため高校で同好会を立ち上げ、「電撃チョモランマ隊」結成。 日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ」復活ダンス甲子園 優勝、JAPAN DANCE DELIGHT優勝など、受賞多数。 2002年、ヴォーカル・ダンスグループとして始動し、2006年10月、メジャーデビュー 。 サザンオールスターズのビデオクリップ振付やライブ全体の振付を2003 年より手がける。その他、ケツメイシ、藤木直人などのライブ・ビデオクリップや、“♪細マッチョ”のサントリー「プロテインウォーター」 、明治「キシリッシュ」などのCMの振付を担当。電撃チョモランマ隊リーダーのQ-TAROとのダンスコントで日本テレビ「エンタの神様」に出演。

辻川幸一郎辻川幸一郎

レコードジャケットや本の装丁など、フリーのデザイナーとして活動中、友人であった小山田圭吾の依頼により、コーネリアスのツアー映像の編集を手がける。以降コーネリアス、カヒミカリィ、UA、スケッチショウ、リップスライムなど数多くのアーティストのMVを中心に映像ディレクターとして活動。近年では資生堂、明治製菓、NTT東日本、Sony EricsonなどのCM、Artist Film,Style Jam,といった映画会社ロゴやWEBデザインなど幅広いジャンルでの企画・演出を手がけている。 2003年、世界最大の映像の祭典、レスフェストにてノミネートされたCorneliusのミュージックビデオ 『DROP-DO IT AGAIN』が、ベストオーディエンス賞を受賞。
http://www.tsujikawakoichiro.com

辻川幸一郎監督のインタビューはこちら


飯塚浩一郎が考えていること。

浩一郎

飯塚浩一郎広告クリエーターである自分とダンサーである自分は、あまり区別していません。ただ自分の中にある衝動や面白いと思うことを、一番いい形で伝える方法をいつも模索しています。 たぶん、僕は「伝える」ということに執着するクリエーターだと思います。

もともと小説家になろうと思って、とある大学の文学部に入ったのですが、小説を突き詰めていって気がついたのは自分たちの想いと、世間の乖離でした。世の中の人は小説を読まない。というか、読む人が自分の望んでいる状況に比べてはるかに少ない。そこで、「文学を分からない奴はほっとけばいいんだ」という人もいると思いますが、僕はそう思いたくなかった。自分の伝えたいことが、手法を進化させることでもっと伝わる形にできるんじゃないかと考えました。そしてこれは今ダンスに関わっていても強く感じることです。

手法の追求のために、慶應大学のSFC (=慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス) に入り直して、映像とお祭りとダンスと、とにかく色々やりました。そこから広告の道に入り、コピーライターという言葉の世界に戻ってきて現在に至ります。

広告は極言すれば「何を言うか」と「どう言うか」を考え、作る仕事です。

ダンスは、その「何を言うか」、の部分が極大化しているように感じます。コンテンポラリーなどでも、想いだけが先行して見ている方は訳が分からなかったり、ストリートダンスでも技術の発表会のようになっていたり。その純粋さに意義があるという見方ももちろん可能ですが、それが工夫次第で、もっと広く・深く伝わるのに、もったいない。

僕もダンスの魔力に魅了された一人のダンサーとして、その力・可能性を信じているので、広告というフィールドでも自分だからできる形があるんじゃないかと常々思っていました。

そこで出会ったのがソニーさんというクライアントです。

ソニーらしい社会貢献活動を展開したいというオリエンを受けて、コピーライターとして参加させていただき、Sony Recycle Project JEANSという活動が生まれました。

その打ち合わせの中で、今の時代だからできる話題の広げ方がないだろうかという話になり、WEBムービーを作ることになりました。そこで「DAZZLEで作ります!」と手を挙げ、DAZZLEを応援してくれているクリエイティブディレクターの後押しも有り、DAZZLEでその映像を作ることが決まりました。

ダンスが分からない人が見ても面白いこと。ダンスを踊る意味があること。DAZZLEと、監督の谷聰志さん(YELLOW BRAIN)で何度も打ち合わせをして、ダンサーがリサイクルし、物語もリサイクルして、プロジェクトのメッセージを伝えるという案にまとまりました。

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この映像で大事なのは1カットで撮影しているということ。その1カットの中で、ダンサーはカメラの後ろを走って回り込んで再び登場する、という動きを繰り返すのですが、その最中にジーンズの着替えまで行います。さらにその動きとカメラの動きのタイミングが完全に一致するまで何十テイクも重ねました。その手作りの執念が、一見するとスムーズな完成版の映像とのギャップになって、面白さにつながっていると思います。

通常、ダンサーはダンスのショー以外では受注産業です。アーティストがいてバックダンサーがいる。TVCMにおいても企画があって、振付師が呼ばれます。その序列を覆して、ダンサーが企画して、提案し、その価値を認めてもらって、実現できたということはエポックメイキングなことだと思います。そういう前例が作れたことが何より素晴らしいことだと思います。

「ダンサーが発想して企画を作れば、何か面白いことが生まれるかもしれない」
その影響はすぐに現れました。

同じくソニーさんのサイバーショットの、「パーティーショット」という新商品で、DAZZLEに再び声をかけていただきました。パーティなどで机に置いておけば、自動的に動いて画角などを調整し、撮影してくれるというこの機能。パーティーのシーンを描くだけでは面白くない・・・。そこでDAZZLEが参加して、パーティーショットの動き自体をダンスで表現し、かつ被写体としても見ごたえのある動きをするという企画ができました。

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飯塚浩一郎

30秒のCMが山手線他の車両内のトレインチャンネルで流されましたが、ダンサーがメインになり、さらにその企画からダンサーが参加できたということで、大きな自信になりました。

そして、ほぼ時を同じくしてコピーライターとして参加していた仕事がダンスCMに決定したのが日産さんの「ROOX」です。

ROOXダンスがCMにおいて「にぎやかし」に終わらない意味を見つけだすことが出来てはじめて、ダンスがメインのCMは成立すると思います。

今回でいえば、車内が高くて広いのが一番の特徴のクルマです。「子供が踊れるくらい広くて楽しいクルマ」というアイデアがクライアントと共有できて、CMが動き出しました。 (仕上がりをイメージしていただくために、自分が踊ってプレゼン用のビデオを作ったりもしました。結果的にこのビデオが辻川監督の中で僕とダンスを作っていくという決心をしてもらう助けになったと思います。)

自分がダンスのディレクションをするということで、ストリートダンスのエッセンスを残しながらキャッチーなダンスが作れる電撃チョモランマ隊のEBATOさんに振付をお願いしました。自分が企画した側にいて、クライアントともEBATOさんとも感覚を共有しながら振付を進められたので、試行錯誤を経ながらも、素敵なバランスのダンスが作れたと思います。

ROOX実際に踊ってくれるダンサーも僕自身が200人の子供たちをオーディションしました。ダンス界に15年近くいて、これだけ踊れる子供たちがいっぱいいることに感動しつつ、MAIKAとRINKAの二人を選びました。MAIKAはダンス界にいれば誰もが知っている天才です。僕もDANCE@LIVEの会場で見て、スキルだけでなく天性の華があるダンサーだとずっと注目していました。小学生でありながら世界で二位になるほどのダンスを育てた大阪ダンス界とご両親に感謝です。そして、RINKAは青森にいながら、僕より年下でダンサーであるお父さんに育てられたということで、ダンスの広がりに感慨を覚えました。

企画の中心にストリートダンスがあるCMというのは珍しい(というかほとんどないと思います。)ですが、自分が関わった仕事で実現できたことをうれしく思います。世の中の人が楽しく見てくれることはもちろんですが、このCMがダンスを始めるきっかけになったり、子供たちがダンスを続けるモチベーションになったりしたら、本当に素敵なことだと思います。

ダンスが、ダンサーが、より世の中からリスペクトされる存在になるためには、世の中にとっての価値を証明する以外にありません。

誰もが理解できる、楽しめる、感動できるダンスを作り上げるためには、ただダンスのスキルを磨くだけでは足りないのではないでしょうか。そこにはダンス自体に費やすのと同じくらいの情熱で「どう伝えるか」という思考と努力が必要であると思います。DAZZLEでは公演で自分たちの表現を追求しつつ、それ以外の場所ではバンドやビートボクサーとのコラボレーション、ポエトリーリーディングでのダンスなど新しい表現にも挑戦しています。広告においても自分の中のダンスクリエイティビティで企業とコラボレーションをするという気持ちで、これからも新しいダンスの価値創造を続けていきたいと思います。

それがこれからのダンサーの生き方の可能性を広げることにつながればいいですね。

求められるのは“わかりやすいんだけど、かっこよくて、幼くないもの。”

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CMを通じてダンスを発信していくその仕組みや想い、方法をクローズアップした特集になればと思っているのですが、まずEBATOさんにとって、CMの振付という仕事をどのように捉えていますか?

EBATO

EBATO僕の中では、CMという手法を使って、どれだけストリートダンスというものをみんなに見てもらえる機会にできるかというところですね。

僕もストリートダンス出身なので、あらゆる現場でオーダーされた内容のどこかには、ストリートダンスのエッセンスを入れようという気持ちはあります。毎回入れ込むのは難しいんですけどね。

TDM

抽象的なオーダーをダンスで具現化するという作業になりますが、そういうときに心がけている点は?

EBATO

実際に撮ってみないとわからないということが多く、ダンスを知らない監督さんも多いので、どれだけ監督の頭の中にイメージされているものを、こちらが拾って形にできるか、ですね。

そのためにはやっぱり相当話し合います。後は、振りを見せてみないと始まらないので、見せて、見せて、どれがいいのかを試すという繰り返しです。

あとは、監督の出す空気ですね。その人はどんなものを好きになる感覚の人なのか、まったく関係のない話とかから引き出します。それに合わせたものをこちらが出せればなと。

TDM

今回の日産「ROOX」のCM撮影で具体的に意識したことはありましたか?

EBATO

EBATO今回は、監督さんが「うん」と言うものと、クライアントが「うん」と言うものと、ぼくらが「うん」と言うもので、どこまでいいバランスを追求できるか、がポイントでした。 僕らはもっともっとダンスにこだわりたいけど、クライアントさん的にはわかりやすいものを求めていて、監督さん的にはちょっとシュールなものを求めていたり。それらをどれだけ皆が納得するところにまですり合わせができるかが、今回のすごく大きなテーマでした。

わかりやすいんだけど、かっこよくて、幼くないもの・・・。

僕としては、今回最初に浩一郎君からの依頼で、「ストリートダンスでやりたい!」という強い思いを受け取っていたので、そこは崩しちゃいけない!お遊戯になってはいけない!という気持ちでした。

簡単すぎるとお遊戯に見えちゃうし、難しすぎるとそのかっこよさが見ていても通り過ぎてしまうんです。

今回の監督とも話していたんですが、普通にただカッコいいだけというのは、意外と人の印象に残らないんです。それは僕も同感です。だからといってすごくキャッチーにしちゃうとお遊戯になってしまう。そのどちらもだな!という、ものすごく難しいバランスで悩みましたね。でも、今回はそのバランスの上手い落としどころに持って行けたんじゃないかなと思います。

正直、数打ちゃ当たる!じゃないですけど、相当振りを作りましたからね (笑) 。ま、それはこの仕事では普通のことなんですが。

EBATOたとえば振りを10個作って見せて、その中から近いものを選び、選んだものに似た路線でまた10個作って見せて・・・そうやってどんどん絞っていった感じですね。監督のOKは出たけど、クライアントがNGだったからまたゼロからやり直しってこともありますし。でも、本当にこういう仕事はそういうものですからね。

TDM

それは途方もない作業ですね。

浩一郎

でも、広告の仕事で言えば、それはごく普通のプロセスですよ。案をたくさん見せて、「違う、違う」と言われ、何回もプレゼンして、打ち合わせも含めれば何百案も採用されなかった案を捨てていく。その広告クリエイティブにとっての普通の過程が、ダンサーもくじけずにやり通せるかどうかが、CMの振りを作って活躍していけるかの分かれ道でしょうね。

たとえば自分も、広告の受け手としての視点に立ってみる。そうすると自分の提案が「ダメ」と言われたことに対して、それには何かの理由、意味があるんだな、自分はいいと思っても世の中には思わない人もいるんだろうなと気がつきます。その意見を受け止めた上で、それを超えるものを出そう、という意識はありますね。

一緒に仕事をする人たちの意見に対して「いや、それはかっこよくないですよ!」と否定してつっぱり過ぎるのはあまり意味がないんじゃないかなと思います。それは、“広告”=“あらゆる人に見せる”という、この業界における特殊な構図だと思いますが。もしかしたら、そういう考えの人が世の中にはたくさんいるんじゃないかと思うと、簡単にその意見を切り捨てられない。全てを一度受け入れたうえで、こちらからも更に良いアイデアで返していくことが大事かなと思います。

自分の伝えたいものが伝われば、自分はそのジャンルのプロじゃなくても、あとはダンサーがやってくれる。


TDM

ダンサー・EBATOとして今着眼していることはありますか?

EBATO

基本はストリートダンスから始まっていますが、振付をするようになってからいろんなジャンルのダンスを見るようになりました。ストリートダンスにあとからどんどんいろんなダンスがミックスされて、「僕」というフィルターを通して出すというスタイルが、自分の特徴なのかなと思います。

なおかつ、CMやPVなど、すごくわかりやすいものを自分は求められるので、一般の人が観てわかりやすいものを生み出すことが自分は得意かなと思ってます。

TDM

それはできることでもあるし、やってて楽しいことでもある?

EBATO

もちろん。やっぱり自分の作品に対して「俺ってこんな踊りもやるんだなー」と客観的に見えたりもします。外からの声を聞くと自分の作った振りがDAZZLEたちからも好評だということを聞いてものすごく嬉しいですし (笑) 。

TDM

ちなみにそれは、ストリートダンスで自分が好きな踊りとはだいぶ違いますか?

EBATO

だいぶ違いますね。振付の仕事を今までやってきて、ちゃんとストリートダンスを入れられたのは今回が初めてなんじゃないかなって思うくらい、まずストリートダンスでの振付の仕事はないです。

TDM

逆にどんな振付を依頼されることが多いんですか?

EBATO

「簡単。すぐ覚えられる。見栄えがいい。」これらの単語を言われることは多いですね。あとは、コンサートなどでは、自分はバレエをやったことがないけど、ダンサーがバレエができるならバレエを入れてみたりもします。

TDM

あ、そんな感じでもいいんですね。

EBATO

EBATO僕はそういうタイプです。自分の伝えたいものが伝われば、自分はそのジャンルのプロじゃなくても、あとはダンサーがやってくれるので、「そうそう。そういうこと。」ってOK出しちゃいます。仕事としてはいいものができあがるなら問題ないかなって思います。

もちろん自分のセンスでの仕事なので、相手からの要求というのは自分が許せる範疇内でないといけないと思います。自分が「絶対違う!」って思うものはやらない。

浩一郎

仕事という面で考えれば、最終的に良ければ手法は問われないんですよね。世の中の人が見てハッピーになれる、そこに向かって逆算していくのが一番効率がいいので。

やっと僕らの世代がやっとストリートダンサーとしての仕事をもらえるようになってきたのかなぁ・・・


TDM

EBATOさん自身のダンスはどういうものになるんですか?

EBATO

グループではなく僕個人で言えば、完全にソウルダンスが大好きです。

TDM

最近の電撃チョモランマ隊は?

EBATO

一度チームとしてある程度完成されてしまったというか、「さぁ、これからどこいこうか?」という話をしながら、行き先を見つけつつ、「こうなりたい、ああなりたい」っていう準備をしている段階ですかね。

でも、やっと僕らの世代がストリートダンサーとしての仕事をもらえるようになってきたのかなぁと思っています。

TDM

チーム結成してから何年になりますか?

EBATO

16〜17年くらいですね。人生の半分をチームで過ごしてます (笑) 。QちゃんとU-SAKUと自分の3人はチーム結成からずっと一緒ですからね。

TDM

それぞれに役割ってありますか?

EBATO

僕が主に音源を整理したりして、リーダーのQちゃんは表の顔なので、そういう場にいろいろ出て行ってもらって、後の二人(U-SAKU, OH-SE)はイケメンなんで、ファン担当です (笑) 。

TDM

ストリートダンスシーンについて話したりしますか?

EBATO

EBATO正直、シーンについては情報で入手する程度なんです。ただ、後輩たちがうまく仕事をしているかどうかは気にしていて、チョモの活動は後輩に仕事がまわせる仕組みを作りたいなと思ってやっている面もあるので。自分たちが今それを自力で切り開いているところですが、後輩たちにはその道をもう少し広くしてあげてから渡してあげたいなと。

TDM

いい人ですね〜 (笑) 。

EBATO

ストリートダンス出身ということで、こういう業界で活動しているということが、どれだけの人に伝わるか、ですね。

ストリートダンサー出身にこだわっているのは自分たちだけなのかなって思ったりもしますけど・・・でも、そういう気持ちを持っていなくちゃいけないなとも思います。

テレビのバラエティ番組に出たときに、振付師という職業はあっても、ダンサーという職業はあまりいないので、ストリートダンサーがいたら面白いなって思いますし。

浩一郎

でも、「エンタの神様」に出演できるストリートダンサーはなかなかいないと思いますけどね (笑) 。

EBATO

まぁ、あれもいろいろ大変で、ネタを作って構成作家さんに見せていくんだけど、100個持っていったら10個通るか通らないか。3つほどOKが出たらやっと収録できる状態。それでも、1年間放送されない可能性もありますし。

TDM

それだけ厳しい世界なんですね。

EBATO

一発屋芸人さんって呼ばれる人たちがいますが、一発当てることすら大変です。まぁ、ダンスシーンもストリートダンサーの中から、スターが1人でも生まれたらだいぶ違うのかもしれないですね。

僕らは裏方として今回のCMのように若い子たちを起用して、成長していってもらって、どれだけ手助けになれるのかなって思うと楽しみです。

TDM

では、今までダンサー、人間・EBATOとして生きてきた中で大事にしてきたものはありますか?

EBATO

気をつけているのは、物事に対して常に熱を冷まさないこと。そうじゃないとすぐに下がってしまうので。そうしていると、仕事や自分が吸収したいと思う物事が向こうからやってきてくれる。でも、熱がないときには全然来ない。

TDM

“熱”と言うと・・・情熱ってこと?

EBATO

情熱もそうですし、自分の今やりたいことは何かを自分で見つけるということですね。家に帰ってボーっとテレビを見る時間がすごく嫌いで、「家に帰ってから何しよう?」って帰る前に考える人間なんです。

でも、冷静に考えたら家に帰ってから何をするかを計画立てるのって変ですよね (笑) 。でも、暇になるのが嫌なんです。

だから、こういう現場がものすごく好きです。ずっと緊張を保ち続けて、本番が終わって「よし!終わった!次にいこう!」っていうときに気持ちがスッとリフレッシュされます。達成感ですね。

TDM

では、最後にTDM読者へのメッセージをお願いします。

EBATO

EBATOダンサーとして生きていくためにはバックダンス以外にもいろいろな可能性があります。バックダンスをやるとしても「あの子のダンスを使いたい!」とアーティストから指名されるようなダンサーになってほしいです。

好きなことを仕事にするのって本当に幸せなことです。さっき僕が仕事の後にリフレッシュできると言ったのは、僕の趣味が仕事で仕事が趣味だから。あまりストレスを感じないです。日本も今そういう時代になりつつあると思うので、皆も頑張ってほしいですね。

TDM

今日はありがとうございました。
'10/01/09 UPDATE
interview & photo by AKIKO
Special Thanks to 日産「ROOX」
ソニー「パーティーショット
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